悪(ワル)の華

ボードレールは、人間を『退屈』に住む『悪』だと思っていたようです。『悪』を詠えば、人間の本質に迫れました。 『悪』はまた、衝動的で扇動的で曖昧でした。 衝動的で扇動的で曖昧なものは、おもしろおかしく好き勝手に扱えました。 『悪』は、『滑稽』にも『美』にも『神』にさえなれました。 こうして人間は、『滑稽』や『美』や『神』に変えられました。 ボードレールのやったことは、それだけのことです。では、ボードレールの言葉遊びに浸りましょう。文中、極めて不道徳で不適切な単語や表現が使用されています。予めご了承ください。

7 病気持ちの詩の女神さんようぉ

詩の女神さんよぉ、あんた、今朝はいかれているぜ。

目に隈ができて、そこに悪夢がまだ居座っているようだ。

不機嫌な顔には、

狂気と恐怖が、入れ代わり立ち代わり表れているぜ。

 

緑色の大悪魔と、ピンク色の小悪魔が、

あんたを、からかったか?

悪夢がいたずらで、あんたを沼底に、

引きずり込んだのか?

 

とにかく、オレが望むのは、あんたが健全で、

強い意志でもって、まっとうなリズムの、

道徳の詩を詠うことだ。

 

歌の神アポロと、豊穣の神パンが、

支配した古代の、できたら、あの素朴で初心な調子でもって、

あんたが詠うのを、オレ写し取って、自分の手柄と親戚に自慢したいんだ。