悪(ワル)の華

ボードレールは、人間を『退屈』に住む『悪』だと思っていたようです。『悪』を詠えば、人間の本質に迫れました。 『悪』はまた、衝動的で扇動的で曖昧でした。 衝動的で扇動的で曖昧なものは、おもしろおかしく好き勝手に扱えました。 『悪』は、『滑稽』にも『美』にも『神』にさえなれました。 こうして人間は、『滑稽』や『美』や『神』に変えられました。 ボードレールのやったことは、それだけのことです。では、ボードレールの言葉遊びに浸りましょう。文中、極めて不道徳で不適切な単語や表現が使用されています。予めご了承ください。

26 飽きもしないで

ムスクとタバコの匂いのしみこんだ、

夜のような黒い肌を持つ、ニグロの魔法使いよ。

草原のファウスト博士が作った、

真夜中の申し子よ、黒檀の脇腹を持つ魔女よ。

 

※1コンスタンスや※2ニュイのワインより、麻薬より、

オレはお前の口づけの方が好きだ。

我慢の限界が来て、砂漠のキャラバンのように、お前に突進するとき、

お前のまなざしは、オレの渇きを癒す水たまりになるのだ。

 

情け容赦しない悪魔よ。魂が出入りしている、お前の黒いふたつ目から、

そんなに欲情の焔を立たせないでくれ。

オレは、お前を9回も満足させる自信はないぜ。

 

それにあれだ、好きもののお前を、ベッドと言う地獄の上で、

ヒイヒイ泣かせて、ギブアップさせてやりたくても、

残念だが、オレは、淫獣の神にはなれないのだ。

 

※1 南アフリカ喜望峰のワイン

※2 ブルゴーニュ地方のワイン