悪(ワル)の華

ボードレールは、人間を『退屈』に住む『悪』だと思っていたようです。『悪』を詠えば、人間の本質に迫れました。 『悪』はまた、衝動的で扇動的で曖昧でした。 衝動的で扇動的で曖昧なものは、おもしろおかしく好き勝手に扱えました。 『悪』は、『滑稽』にも『美』にも『神』にさえなれました。 こうして人間は、『滑稽』や『美』や『神』に変えられました。 ボードレールのやったことは、それだけのことです。では、ボードレールの言葉遊びに浸りましょう。文中、極めて不道徳で不適切な単語や表現が使用されています。予めご了承ください。

お前(めえ)らに

乞食に虱や蚤がわくように、

たくらみと、欲と、金への執着と、そして妬みが、

オレの身体に染み込んでいるんだ。お前らもそうだろ?

舌に言い訳を重ねて、その場しのぎで生きているだけだろ?

 

会心しろなんて、ありがてぇ言葉は、屁のつっぱりにもなんねぇ。

せいぜい、気が済むまで告白懺悔のくだまいたら、

腐った身体を、ウソの涙でさっぱり洗い流して、

浮かれ気分で汚れた街に、繰り出すのが、まあオチさ。

 

おっ、耳の裏まで墨を入れた※1魔王トリスメジストがマッチョな身体を晒して登場かぁ!

心強い金ヅルのお出ましで、オレはここ何日も気が高ぶって寝ていねぇ。

考えてみりゃ、オレらの金銭詐欺も、

この魔王様のイカサマの前じゃあ、ガキのお遊びだぁ!

 

所詮、オレらは『悪(ワル)』から逃れられねぇぜ。

だからよぉ、ヤバいもんの言い逃れに必死こいて、

臭せぇ闇も怖がらねぇでよぉ、空威張りで、

毎日毎日一歩ずつ、地獄に堕ちとシケ込もうぜ。

 

金欠のスケベが、膏薬臭せぇ立ちんぼうのクソババァの、

しぼんだ乳を、干からびたオレンジから汁を啜るように、

チュウチュウ吸ったあと、、

半腐りのオマンコをかき回すようなもんだ。

 

そもそも『悪(ワル)』ってやつは、蛆虫が群がってひしめき合っているのを想像すりゃあいいや。

『悪(ワル)』は、オレらの脳ミソを食い荒らし、一休みするごとに、 

変な呼吸の音を出しやがる。そしてよぉ、オレらの肺の中にまで忍び込んで、

死に追いやろうとするんだ。

 

レイプ、ヤク、殺傷、放火。おお、上等じゃあねぇかよぉ、

これらが、オレの生きざまに箔をつけていねぇとしたら、

情けねぇよなぁ。

キンタマぶら下げる資格がねぇってもんだ。

金色のオオカミ、ヒョウ、山犬、 

サル、サソリ、ハゲタカ、ヘビ。そろいもそろった動物園。

中でも人間様の本性は、一番の見世物。

鳴いて、唸って、吠えて、這いまわる。

 

いやいや、もっと凄えバケモノがいる。

ひっそり生きて、大声もはり上げりゃしねぇが、 

こいつはタダ者じゃあねぇ。あっちこっちをぶち壊しながら、

壊しながらも、つまんねぇと欠伸をこいて、世界を飲み込むバケモノだ。

 

そいつが何だか分かるか……? 無気力だよ。何ーんもする気が起きないこと。  

欠伸の涙目で、タバコをふかしながら、死刑台の夢を見るバケモノだ。

お前(めぇ)ら、よく頭に叩き込んでおけよ、この厳重注意のバケモノの事を。

なあぁ、お利巧ちゃん……、オレのダチ……。兄弟。

 

※1 古代エジプトの半神半人の錬金術