悪(ワル)の華

ボードレールは、人間を『退屈』に住む『悪』だと思っていたようです。『悪』を詠えば、人間の本質に迫れました。 『悪』はまた、衝動的で扇動的で曖昧でした。 衝動的で扇動的で曖昧なものは、おもしろおかしく好き勝手に扱えました。 『悪』は、『滑稽』にも『美』にも『神』にさえなれました。 こうして人間は、『滑稽』や『美』や『神』に変えられました。 ボードレールのやったことは、それだけのことです。では、ボードレールの言葉遊びに浸りましょう。文中、極めて不道徳で不適切な単語や表現が使用されています。予めご了承ください。

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今朝のことだ、飽きっぽいオレの性分が、

むくむくと、胸クソ悪く立ち現れて、

隣で眠り込んでいる年増女を三白眼で睨みながら、こう囁いてきた。

「ひとつ尋ねてもいいか? 

 

 お前、まだこの女に未練があるらしいが、

 こいつの身体の、

 どのパーツが、

 黒いところや、バラ色のところも含めて、

 

 ナニが一番、具合いいんだ?」———オレは半身を起こし、

 この『飽きっぽい性分』にこう答えた。

「この女のすべてが好きなんだよ。

 あそこの締まりがいいとか、そんな事じゃあねぇ。

 

 とにかくオレをとろけさせる。いったい何が、

オレをここまで虜にしたのか。この女の、

親から転がり込んだ不動産は、オレを有頂天にし、

貯め込んだ預金の桁数は、オレを計算高くした。

 

そして、このオールドミスの、切羽詰まった寂しさ悲しさが、

盛りを過ぎたその肉を狂わせて、何だかたまんねぇんだ。

頭の悪ぃオレが、

そのややこしい感じを、細かく説明することは、どだい無理な話だ。

 

単純にオレは、肉と金に溺れている。

不思議な感覚だ!

この女の吐息はオレの優越。

この女の命令はオレの劣敗。それだけだ」