悪(ワル)の華

ボードレールは、人間を『退屈』に住む『悪』だと思っていたようです。『悪』を詠えば、人間の本質に迫れました。 『悪』はまた、衝動的で扇動的で曖昧でした。 衝動的で扇動的で曖昧なものは、おもしろおかしく好き勝手に扱えました。 『悪』は、『滑稽』にも『美』にも『神』にさえなれました。 こうして人間は、『滑稽』や『美』や『神』に変えられました。 ボードレールのやったことは、それだけのことです。では、ボードレールの言葉遊びに浸りましょう。文中、極めて不道徳で不適切な単語や表現が使用されています。予めご了承ください。

2 アホウ鳥

暇つぶしに、船乗りさんは、

アホウ鳥を、生け捕りして、弄ぶ。

アホウ鳥は、調子にコイて船尾にホイホイとついて来くる。そして、

難なく、捕まえられる。だからアホウ鳥。

 

アホウだが、※1なにしろデカい。一見すると、

空の王者のようだ。ところがどっこい、

生け捕りしたこの鳥を、甲板に縛り付けると、

大きな翼を両脇に引き摺って、情けねぇかっこうになる

 

おどおど、怖気づいて、

あの空を翔けまわる、王者の風格は、もうどこにもねぇ。 

船乗りさんは、錨のタトゥーの腕伸ばし、煙草の火で嘴を突っつく。

それに、ビッコ曳く格好真似て、大ウケしているやつもいる。

 

どうだ、アホウ鳥は、詩人に似ていないか?

シケの大海さえ、悠々、翔ける王者のアホウ鳥が、

地べたに追いやられると、 

する事なす事、ぶきっちょになる。詩人なんか、カタワさ。

 

※1 アホウ鳥は翼をひろげると3メートルある。