死体を舐める蛆虫のように、樫の木を齧る青虫のように、
オレを食い荒らす、
浅い呼吸で、のたうち這いずり回っている、
長い年月を生き延びた、老いぼれた『後悔』を、
オレは、〆殺すことが出来るだろうか?
男を破滅させる、貪欲な娼婦か、あるいは、
しつこい蟻のような、
積年の『後悔』を、
どの薬品に、どの酒に、沈めてしまえばいいんだ。
いったい、どの薬だ? どの酒だ?
教えてくれ美しい女よ。知っているなら教えてくれ!
苦しみぬいたオレに、
死にぞこないに踏みつけられ、馬の蹄に蹴飛ばされた、
瀕死のオレに、
言ってくれ、知っているなら、言ってくれ。
オオカミが嗅ぎつけ、カラスも目を付けている、
この半死のオレは、
傷ついた兵士のオレは! 本当に墓と十字架を、
諦めなければならないのか、それを教えてくれ。
飢えたオオカミが、オレの耳元を嗅いでいる。
『安宿』の格子窓に輝いていた『希望』は、
吹き消されて、永遠に死に絶えてしまった!
月もなく、光もなく、道に迷う巡礼者のオレは、
いったいどこに寝ればいいのだ!
『悪魔』が『希望』を吹き消してしまったのだ。
美しい女よ、お前は地獄に堕ちるオレを愛せるか?
言ってくれ、許されない罪とは何なんだ?
『後悔』と言う毒矢で、オレの心臓を的にしようとする、
そいつの名前を知っているのか?
美しい女よ、地獄に堕ちるオレを本当に愛せるのか?
『後悔』は、その呪われた歯で、
惨めなオレの心臓を齧る。
そしてシロアリのように、
オレの骨をボロボロにする。
『後悔』の呪われた歯は、なにもかも齧り倒すのだ。
ときどきオレは、場末の劇場の道具部屋で、
調子はずれの楽団に合わせて、
一匹の妖精が絶望に、
奇跡の灯をともすところを見た。
場末の劇場の道具部屋でのことだ。
そしてオレは、薄絹をまとった神が、
悪魔と激闘を演じているとも耳にしたことがある。
しかし、その場面の恍惚を味わったためしはない。
ここの観客はただ、待つことしか出来ないのだ。
いつまでも、いついつまでも、いつか薄絹をまとった存在が現れるのを待つしかないのだ。