55 たわごと
アンタは、潮のようにオレに迫り、
引きながら、オレの唇に、
苦い泥の思い出を残していく。
秋空のように取り澄ましているアンタだけに、皮肉だ。
———アンタの手がオレの胸に滑り込んでも、もう駄目だ。
アンタがまさぐるそこは、
女の爪と歯でキズだらけだ。
これ以上、オレを求めないでくれ。オレは陰獣に喰い尽くされてしまったのだから。
オレの心臓は暴徒に荒らされた宮殿だ。
そこでは泥酔、喧嘩、挙句の果てに殺人まで行われた。
な、なにをするんだ。服を脱ぐのか! はだけた胸から立ち上る臭いに、オレの情欲がまた疼く。
アンタはオレの魂を打つ災いだ。鞭はアンタの手に握られているのだ。
祭りの焚き上げのように輝くアンタの眼で、
喰い残された肉片を焦がしつくしてくれ。