アガド、どきどきお前(めぇ)ぶっ飛んだだろう、
常識つぅ偽善の街から、
あの海の方へ、
深く濁って臭い情欲の海に。
どうなんだアガド、ぶっ飛んだのか?
情欲の海はオレらの苦痛を癒してくれる。
壊れたオルガンの伴奏で、
ただ不器用な声で歌っているだけなのに、
オレらを癒してくれるとは、それはどんな魔物のカラクリだろう。
とにかく情欲の海にオレらは癒されるのだ。
連れて行ってくれ、ヤク! 拉致してくれ、ハッパ! 遠くへ、遠くへ!
現実はオレらの涙でできている泥だ。
———本当なのかアガド?
お前の満たされたい身体がこう訴えたのは、
「後悔から、罪から、苦悩から遠く離れた楽園に連れて行って! さらって行って!
ところでその楽園は、なんて遠いところにあるのかしら!
眩しいカーテンに囲まれて、喜びにあふれたところ、
払う代償にみあうだけの価値を持っているところ、
純粋な欲望に溺れるところ、
楽園は、なんて遠いところにあるのかしら!
バカになれる楽園!
ふざけあい、うめきあい、キスして、ウソを信じるふりをして、
愉快な音楽が流れ、
音楽に揺れて全身が麻痺した夕暮れ、
バカになれる楽園!
束の間の無邪気は、
この矯正病棟から遠く離れてしまったわ。
もう泣き叫んでも手に入らない。
血色の声を絞っても手に入らないわ。
あの束の間の無邪気は」