悪(ワル)の華

ボードレールは、人間を『退屈』に住む『悪』だと思っていたようです。『悪』を詠えば、人間の本質に迫れました。 『悪』はまた、衝動的で扇動的で曖昧でした。 衝動的で扇動的で曖昧なものは、おもしろおかしく好き勝手に扱えました。 『悪』は、『滑稽』にも『美』にも『神』にさえなれました。 こうして人間は、『滑稽』や『美』や『神』に変えられました。 ボードレールのやったことは、それだけのことです。では、ボードレールの言葉遊びに浸りましょう。文中、極めて不道徳で不適切な単語や表現が使用されています。予めご了承ください。

79 妄想

巨大な森が怖い! それはそびえる大伽藍だ。

心やましいオレによって、そこは臨終の場と言える。

オルガンの重い響きがオレにのしかかり、

深い緑にこだまして、気が狂いそうになる。

 

大海原は許せない! そのはしゃぎ方と騒々しさは、

オレ自身を見るようで、目を逸らしたくなる。

敗北した男の嘆きと罵倒。つまり負け犬の遠吠え。

海の高笑いの中に、それと同じものを聞きつけた。

 

夜は好きだ! 

ただしおしゃべりな星々の煌めきはゴメンだ。

オレは空虚と、暗黒と、絶対を求めているのだ!

 

暗闇は、オレの記憶を描いたキャンバスだ。

そこにはオレが殺(や)ったヤツらが、

まだ生きている。