悪(ワル)の華

ボードレールは、人間を『退屈』に住む『悪』だと思っていたようです。『悪』を詠えば、人間の本質に迫れました。 『悪』はまた、衝動的で扇動的で曖昧でした。 衝動的で扇動的で曖昧なものは、おもしろおかしく好き勝手に扱えました。 『悪』は、『滑稽』にも『美』にも『神』にさえなれました。 こうして人間は、『滑稽』や『美』や『神』に変えられました。 ボードレールのやったことは、それだけのことです。では、ボードレールの言葉遊びに浸りましょう。文中、極めて不道徳で不適切な単語や表現が使用されています。予めご了承ください。

109  破壊(快楽とは)

悪魔が、オレの周りでうろついている。触れられない空気のように、フワフワと。

だからうっかり、ヤツを吸い込んでしまう。

ヤツはオレの肺の中で、業火の焚き木を始める。

するとオレは、罪を犯したい衝動に駆られる。

 

ヤツはオレの弱点を知っている。

時々、とびきりの美女になって現れる。

そして、「口づけをしましょう」と囁いて、オレの唇に変な薬を塗り、

本物の快楽の味を覚えさせる。その瞬間、

 

オレはクタクタに疲れ果て、息を切らす。

そして、神から遠ざけられ、

ひと気のない荒野の真っただ中に連れて行かれる。そこで悪魔は、

 

途方にくれるオレの目の中に、

ボロボロの服や、開いた傷口や、

破壊に使った血まみれの凶器を投げ隠し、何もなかったかのように微笑む。