その寝室に散らかっていたのは、
香水瓶、金糸銀糸の布、なまめかしい家具、
大理石の置物、絵画、
大袈裟に裾を引きずるドレス。
そして、生暖かいムッとする空気。
枯れた花が、
ガラスの棺桶に納まって、
臨終の息を肩でしていた。
そこには首無しの死体がひとつ転がっていた。
生臭い血を、
枕とシーツが、
乾燥した牧場のように吸っていた。
この暗闇に、ベッドサイドテーブルの上で、
ボヤッと青白く光りものがあった。生首だった。
大きなダイヤを耳に飾り、
真っ黒な髪を振り乱し、
匂いたつキンポウゲの花に似ていた。
黄昏のようにとらえどころのない眼差しが、
白目をむいた目から、
放たれていた。
ベッドには、裸の胴体が恥ずかしげもなく、
だらしのない姿で転がっていた。
天性のまばゆい裸体を臆面もなくさらし、
殺される動機を作った『美』を自慢しているようだった。
薄桃色の靴下に施された金の刺繍は、
思い出を語るように足に留まり、
靴下留めは、燃える秘密の目のように、
ダイヤモンドのように冷たく輝いていた。
この静かで奇妙な光景は、
大きな肖像画のようだった。
いや、殺された女の勝気な眼差しそのものだった。
ここから読み取れるのは、真っ暗な愛欲。
変態快楽の残り滓。地獄の口づけにも飽きた、
異常の祝祭。
性悪の天使が、カーテンの隙間から、
ニッコリ笑ってのぞき見していたのだ。
よく見ればベッドの上の胴体は、ほっそりとして、
色っぽい肩のラインと腸骨の張った腰を持っている。
怒った蛇を想像させる身体から察して、
この女はまだ若かったと思われる。
———若さゆえの好奇心からか、
その昂ったオマンコは、
なりふり構わずヤリたくなった男に向かって、
大きく開かれたのだろう。
生前、お前さんが心身削って尽くした男は、
殺人を犯したことでかえって興奮し、
お前さんの身体を弄んだ気配がある。
図星だろう!
ふしだらな死体よ、何か言え! 男は、お前さんの硬く編んだ髪の毛を、
火照った片腕で引きずり回したではないか?
さあ答えろ、血まみれの生首よ! 男はお前さんの冷たくなった歯をこじ開けて、
舌を差し込んできたのか?
———まあ、いい。今はとにかく、世間の陰口や好奇心から距離をとって、
詮索好きな警察も無視して、
不思議な女よ、静かに眠れ、静かに眠れ、
秘密を抱いたまま墓の中で眠れ。
お前さんの死んだ姿は、憎くて可愛い男の脳裏に焼き付いたはずだ。
つまり男は、世界の果てに逃げようとも、
お前さんに見守られ続けるわけだ。もうこれで、
男は誰とも交われず、お前さんに純情を捧げつくすことになるのだ。