悪(ワル)の華

ボードレールは、人間を『退屈』に住む『悪』だと思っていたようです。『悪』を詠えば、人間の本質に迫れました。 『悪』はまた、衝動的で扇動的で曖昧でした。 衝動的で扇動的で曖昧なものは、おもしろおかしく好き勝手に扱えました。 『悪』は、『滑稽』にも『美』にも『神』にさえなれました。 こうして人間は、『滑稽』や『美』や『神』に変えられました。 ボードレールのやったことは、それだけのことです。では、ボードレールの言葉遊びに浸りましょう。文中、極めて不道徳で不適切な単語や表現が使用されています。予めご了承ください。

39

あんたに贈るぜ、この詩を。

もし万々が一、オレの名が、

異常気象の北風に追われた船のように、後世に伝わり、

ある夜のこと、この詩を読んだ男の脳味噌に、

 

あんたのことが、夢物語となって蘇り、

音楽さながら、詩句はイヤーワームとなり、

オレの気持ちが通じたのか、その男は、

詩の一行一行に、首を吊ってぶら下がる。

 

いいか、よく考えてみろ、この世に、

あんたをマジに相手するのは、オレを除いていないぜ。

あんたは、あっと言う間の足跡も残せない、幽霊なんだぜ。しかし、

 

あんたは詩になって、足取り軽く、涼しい顔して、

あんたを、ゲスと呼んだ死すべき運命の人間たちを踏みつぶして、

真っ黒い瞳とブロンズの額を持った、永遠の存在になるんだ。