悪(ワル)の華

ボードレールは、人間を『退屈』に住む『悪』だと思っていたようです。『悪』を詠えば、人間の本質に迫れました。 『悪』はまた、衝動的で扇動的で曖昧でした。 衝動的で扇動的で曖昧なものは、おもしろおかしく好き勝手に扱えました。 『悪』は、『滑稽』にも『美』にも『神』にさえなれました。 こうして人間は、『滑稽』や『美』や『神』に変えられました。 ボードレールのやったことは、それだけのことです。では、ボードレールの言葉遊びに浸りましょう。文中、極めて不道徳で不適切な単語や表現が使用されています。予めご了承ください。

50 曇り空

お前の眼差しには、靄がかかっている。

読めねぇ。

ご機嫌だと思ったら、夢見るように虚ろになり、

夢見心地なんだぁ、と思えば、無残に青ざめた空を映し出している。

 

色恋沙汰に翻弄され、情けねぇことだが、涙を流し、

屈辱と敗北に、気が滅入り、

ただ神経だけは昂る、あの、

どんよりした曇り日は、アンタそのものだ。

 

あの地平線にも、アンタは似ている。

濃霧の季節に、太陽の光の雫が地平線に滴り、

滴った瞬間、雫が炎と燃え立つ地平線。

アンタもまた、炎に湿った景色だ。

 

危険な女よ! 人を惑わす自然の成り行きよ!

オレは、雪をも霜をも、愛することが出来るだろうか?

そして真冬から、氷柱や剣よりも鋭い、

快楽を引き出すことが、はたして出来るだろうか?