悪(ワル)の華

ボードレールは、人間を『退屈』に住む『悪』だと思っていたようです。『悪』を詠えば、人間の本質に迫れました。 『悪』はまた、衝動的で扇動的で曖昧でした。 衝動的で扇動的で曖昧なものは、おもしろおかしく好き勝手に扱えました。 『悪』は、『滑稽』にも『美』にも『神』にさえなれました。 こうして人間は、『滑稽』や『美』や『神』に変えられました。 ボードレールのやったことは、それだけのことです。では、ボードレールの言葉遊びに浸りましょう。文中、極めて不道徳で不適切な単語や表現が使用されています。予めご了承ください。

122 貧乏人たちの死

こうやって生き長らえられるのも、『死』と言う慰めがあるからだ!

『死』こそが、生きる目的だ。唯一の希望だ。

『死』は、麻薬のようにオレを酔わせ、

夕暮れまで、とりあえず歩く勇気を与えてくれるのだ。『死』は、

 

嵐を突っ切り、雪を踏み越え、霧氷をかき分け、その向こうにある、

黒い地平線に震える輝きだ。

人生のガイドブックに書かれた名高き宿だ。

たらふく食べて、ゆっくり眠って、伸び伸びできるところだ。

 

またそこは救いの天使のたまり場だ。

未知の力をため込んだ天使の手が、

素っ裸の貧乏人の寝床を整えるのだ。

 

『死』は神さまの宝箱だ。いや、神さまの栄光そのものだ。

貧しい者の財布であって、遥かに遠いふるさとだ。

そして、天国につながる柱廊だ!