悪(ワル)の華

ボードレールは、人間を『退屈』に住む『悪』だと思っていたようです。『悪』を詠えば、人間の本質に迫れました。 『悪』はまた、衝動的で扇動的で曖昧でした。 衝動的で扇動的で曖昧なものは、おもしろおかしく好き勝手に扱えました。 『悪』は、『滑稽』にも『美』にも『神』にさえなれました。 こうして人間は、『滑稽』や『美』や『神』に変えられました。 ボードレールのやったことは、それだけのことです。では、ボードレールの言葉遊びに浸りましょう。文中、極めて不道徳で不適切な単語や表現が使用されています。予めご了承ください。

121 恋人たちの死

オレたちのベッドは、ほのかにいい香りに抱かれていた。

ソファーは墓穴のように深くに沈む。

棚の上には、美しい空の下でしか咲かない花が、

飾られていた。ここはオレたちの最後にはふさわしい部屋だ。

 

オレとお前は、ふたつの焔だった。

互いの競い、合わせ鏡に映ったように、

息を合わせ、重なり合って、最後の最後まで、

その熱を燃やし尽くした。

 

バラ色と不思議な青色で作られたある夜に、

オレたちは結合し、閃光を交わし合うのだ。たった一つの大切な閃光を。

別れの言葉でできた、すすり泣きのような閃光を。

 

やがて一人の天使が扉からそっと顔を覗かせる。

天使は、ヒビの走った合わせ鏡と燃え尽きた焔を抱きかかえるだろう。

そして、腕を天に向かって差し向けるだろう。