MDMAがあれば、みすぼらしいボロ屋も、
目もくらむ豪邸に変わる。
古代の柱廊が荘厳に、
赤い水蒸気の中から、キラキラ浮かび上がる。
それは、曇り空に、夕日が沈む景色に似ている。
LSDがあれば、境界線がぐんぐん広がり、
無限がどんどん伸び、
時間は重なって深まり、快楽は底なしになる。
そして、赤黒い性欲によって、
オレの限界が崩壊していく。
ただ、MDMAもLSDも、アンタの眼からにじみ出る、
その毒汁ほどの価値は無ぇ。
そこには、逆さまのオレが震えながら映っている。その眼は湖で、
二つの水溜りに、
渇きを癒そうと、オレの夢がむらがっている。
アンタの唾液ほど怖くは無ぇんだ。そのぬめる液体は、
オレの頭を真っ白にさせ、挙句の果てに、
頭痛で衰弱しきったオレを、
死の岸辺へと転がすのだ。