悪(ワル)の華

ボードレールは、人間を『退屈』に住む『悪』だと思っていたようです。『悪』を詠えば、人間の本質に迫れました。 『悪』はまた、衝動的で扇動的で曖昧でした。 衝動的で扇動的で曖昧なものは、おもしろおかしく好き勝手に扱えました。 『悪』は、『滑稽』にも『美』にも『神』にさえなれました。 こうして人間は、『滑稽』や『美』や『神』に変えられました。 ボードレールのやったことは、それだけのことです。では、ボードレールの言葉遊びに浸りましょう。文中、極めて不道徳で不適切な単語や表現が使用されています。予めご了承ください。

49 麻薬

MDMAがあれば、みすぼらしいボロ屋も、

目もくらむ豪邸に変わる。

古代の柱廊が荘厳に、

赤い水蒸気の中から、キラキラ浮かび上がる。

それは、曇り空に、夕日が沈む景色に似ている。

 

LSDがあれば、境界線がぐんぐん広がり、

無限がどんどん伸び、

時間は重なって深まり、快楽は底なしになる。

そして、赤黒い性欲によって、

オレの限界が崩壊していく。

 

ただ、MDMAもLSDも、アンタの眼からにじみ出る、

その毒汁ほどの価値は無ぇ。

そこには、逆さまのオレが震えながら映っている。その眼は湖で、

二つの水溜りに、

渇きを癒そうと、オレの夢がむらがっている。

 

そして、MDMLSDも、オレの心臓を溶かす、

アンタの唾液ほど怖くは無ぇんだ。そのぬめる液体は、

オレの頭を真っ白にさせ、挙句の果てに、

頭痛で衰弱しきったオレを、

死の岸辺へと転がすのだ。