宝石(禁断詩篇より)
惚れた女は、オレのスケベ心を知り抜いて、
弾ける宝石だけを身に着けて、真っ裸。
チヤホヤされて、
鼻っ柱を天井に向けて、ご満悦だ。
身体を動かすたびに、金銀細工はガチャガチャ、
宝石は、オレを小バカにしてカチカチ。
光と音がさんざめくこの光景を、
オレは、チンポをデカくさせて眺めている。
女は長椅子に横たわり、オレを見下ろして、
薄ら笑い。
凪いだ海のように内気なオレは、
断崖絶壁に寄せる波となって、女の方へ這い上がろうとする。
女は、飼い馴らされたトラのように、据わった目でオレを見下ろして、
うわの空で身体をひねった。そうなると女は、
純情に、淫乱が上塗りされ……、
オレ、鼻血が出そうだ!
腕が、足が、太もも、腰が、
油のようになめらかで、白鳥の首のようにウネウネと、
見開いたオレの目の前を通り過ぎる。
豊穣の園の、ブドウのようなその乳房は、
悪戯好きの小悪魔よりも、思わせタップリに登場する。
そしてオレの欲情をかき乱す。いやそんなもんじゃあねぇ。
ひとり水晶の岩の上で、瞠目瞑想しているオレを、
足蹴りして突き落とす。
女の胴は細くくびれて骨盤が目立つ。
それは、胴に少年の上半身を繋げたようで、
凝った新奇なデザインだ。
浅黒い肌に、赤いチークは、オレの心臓を破裂させる。
ともし火は、少しずつ細くなっている。やがて灯は消え、
暖炉の火が、ただ部屋を照らすばかりとなった……、
その火が炎のため息をつくたびに、
女の肌が、血色に輝く!
忘却の河
オレのそばに来い、非情の女。
飼い馴らされた獣。無邪気な妖怪。
その崩れた髪に、オレの指を差し込んで、
お前の体温を感じてみたい。
スカートの中に、
オレのイカれた頭を突っ込んで、
枯れ始めた花のような、
オマンコの饐えた臭いを嗅いでいたい。
褐色に輝く、お前のきれいな體(からだ)に、
思い残すことないように、濡れた舌を這わせて、
死のように気持ちのいい眠りにつきたい。
生きているなんて、つまらないこったぁ。とにかく眠りたい。
オレが、悲しみの吐き気を嚥(の)み下すには、
お前とセックスする以外に、どんな方法があると言うのだ。
野獣になって、お前にキスして、オレは何もかも忘れる。
お前の口の中の唾液の河に溺れ、オレの悲しみは溶けて消えるのだ。
もうオレは、セックスに惑う阿呆になろう。
それがオレの宿命なら、逆らう気など毛頭ない。
オレは、お前の中で果てる身。死の処刑を受ける身。
快楽の信仰は、死への憧れの架刑。
オレの気を紛らわせるためには、
慈しみを抱いたことのない、お前のその胸の、その乳首に、
口をつけ、憂さをはらす媚薬と毒薬を、
吸うだけだ。