悪(ワル)の華

ボードレールは、人間を『退屈』に住む『悪』だと思っていたようです。『悪』を詠えば、人間の本質に迫れました。 『悪』はまた、衝動的で扇動的で曖昧でした。 衝動的で扇動的で曖昧なものは、おもしろおかしく好き勝手に扱えました。 『悪』は、『滑稽』にも『美』にも『神』にさえなれました。 こうして人間は、『滑稽』や『美』や『神』に変えられました。 ボードレールのやったことは、それだけのことです。では、ボードレールの言葉遊びに浸りましょう。文中、極めて不道徳で不適切な単語や表現が使用されています。予めご了承ください。

宝石(禁断詩篇より)

惚れた女は、オレのスケベ心を知り抜いて、

弾ける宝石だけを身に着けて、真っ裸。

チヤホヤされて、

鼻っ柱を天井に向けて、ご満悦だ。

 

身体を動かすたびに、金銀細工はガチャガチャ、

宝石は、オレを小バカにしてカチカチ。

光と音がさんざめくこの光景を、

オレは、チンポをデカくさせて眺めている。

 

女は長椅子に横たわり、オレを見下ろして、

薄ら笑い。

凪いだ海のように内気なオレは、

断崖絶壁に寄せる波となって、女の方へ這い上がろうとする。

 

女は、飼い馴らされたトラのように、据わった目でオレを見下ろして、

うわの空で身体をひねった。そうなると女は、

純情に、淫乱が上塗りされ……、

オレ、鼻血が出そうだ!

 

腕が、足が、太もも、腰が、

油のようになめらかで、白鳥の首のようにウネウネと、

見開いたオレの目の前を通り過ぎる。

豊穣の園の、ブドウのようなその乳房は、

 

悪戯好きの小悪魔よりも、思わせタップリに登場する。

そしてオレの欲情をかき乱す。いやそんなもんじゃあねぇ。

ひとり水晶の岩の上で、瞠目瞑想しているオレを、

足蹴りして突き落とす。

 

女の胴は細くくびれて骨盤が目立つ。

それは、胴に少年の上半身を繋げたようで、

凝った新奇なデザインだ。

浅黒い肌に、赤いチークは、オレの心臓を破裂させる。

 

ともし火は、少しずつ細くなっている。やがて灯は消え、

暖炉の火が、ただ部屋を照らすばかりとなった……、

その火が炎のため息をつくたびに、

女の肌が、血色に輝く!

 

            忘却の河

 

オレのそばに来い、非情の女。

飼い馴らされた獣。無邪気な妖怪。

その崩れた髪に、オレの指を差し込んで、

お前の体温を感じてみたい。

 

スカートの中に、

オレのイカれた頭を突っ込んで、

枯れ始めた花のような、

オマンコの饐えた臭いを嗅いでいたい。

 

褐色に輝く、お前のきれいな體(からだ)に、

思い残すことないように、濡れた舌を這わせて、

死のように気持ちのいい眠りにつきたい。

生きているなんて、つまらないこったぁ。とにかく眠りたい。

 

オレが、悲しみの吐き気を嚥(の)み下すには、

お前とセックスする以外に、どんな方法があると言うのだ。

野獣になって、お前にキスして、オレは何もかも忘れる。

お前の口の中の唾液の河に溺れ、オレの悲しみは溶けて消えるのだ。

 

もうオレは、セックスに惑う阿呆になろう。

それがオレの宿命なら、逆らう気など毛頭ない。

オレは、お前の中で果てる身。死の処刑を受ける身。

快楽の信仰は、死への憧れの架刑。

 

オレの気を紛らわせるためには、

慈しみを抱いたことのない、お前のその胸の、その乳首に、

口をつけ、憂さをはらす媚薬と毒薬を、

吸うだけだ。