悪(ワル)の華

ボードレールは、人間を『退屈』に住む『悪』だと思っていたようです。『悪』を詠えば、人間の本質に迫れました。 『悪』はまた、衝動的で扇動的で曖昧でした。 衝動的で扇動的で曖昧なものは、おもしろおかしく好き勝手に扱えました。 『悪』は、『滑稽』にも『美』にも『神』にさえなれました。 こうして人間は、『滑稽』や『美』や『神』に変えられました。 ボードレールのやったことは、それだけのことです。では、ボードレールの言葉遊びに浸りましょう。文中、極めて不道徳で不適切な単語や表現が使用されています。予めご了承ください。

69 音楽

音楽を聴くと、海に乗り出した気分になる。

青白い星を羅針盤にして、

大空の下、霧深い海へ。

あるいは、透き通った空気の中へ。

 

帆が、風を受けるように、

肺を膨らませ、胸を突き出し、

暗闇に重なった怒涛の、

その背を這い上って行く。

 

大海溝の上で、

順風に、あるいは暴風に、揉まれる船の不安が、

オレの内側で目覚める。

 

行くにも、引くにも思い悩んだとき、

唐突に海は凪、静かな水面が鏡となる。

そして、オレの犯した数々の犯罪を映し出す。