悪(ワル)の華

ボードレールは、人間を『退屈』に住む『悪』だと思っていたようです。『悪』を詠えば、人間の本質に迫れました。 『悪』はまた、衝動的で扇動的で曖昧でした。 衝動的で扇動的で曖昧なものは、おもしろおかしく好き勝手に扱えました。 『悪』は、『滑稽』にも『美』にも『神』にさえなれました。 こうして人間は、『滑稽』や『美』や『神』に変えられました。 ボードレールのやったことは、それだけのことです。では、ボードレールの言葉遊びに浸りましょう。文中、極めて不道徳で不適切な単語や表現が使用されています。予めご了承ください。

101  霧と雨

秋の終わりと冬、そして雪解け水にぬかるむ春。

オレたちを死に導いてくれる季節たち!

オレの心と脳味噌は、

お前たちの蒸気の屍衣と、濡れた墓石に包まれるのだ。

 

広い平原に冷たい風が吹きすさむ。

長い夜には、風見鶏が声を枯らして回り狂う。

オレの魂は、生温い春に負けないほど、

翼をのびのびと広げる。

 

不吉なものに満たされた、霜の立った心にとって、

自然を支配する、だが病んだ女王のような季節ほど、

また青ざめた景色ほど、

 

オレを心地よくしてくれるものはない。

———だたし、暗闇で、誰はばからず見知らぬ人と派手なセックスに耽る時間は、

別としての話だが……。