悪(ワル)の華

ボードレールは、人間を『退屈』に住む『悪』だと思っていたようです。『悪』を詠えば、人間の本質に迫れました。 『悪』はまた、衝動的で扇動的で曖昧でした。 衝動的で扇動的で曖昧なものは、おもしろおかしく好き勝手に扱えました。 『悪』は、『滑稽』にも『美』にも『神』にさえなれました。 こうして人間は、『滑稽』や『美』や『神』に変えられました。 ボードレールのやったことは、それだけのことです。では、ボードレールの言葉遊びに浸りましょう。文中、極めて不道徳で不適切な単語や表現が使用されています。予めご了承ください。

36 バルコニー

女の中でも、いっとう好きだった母ちゃん!

母ちゃんは、オイラの喜び! オイラの宿命!

母ちゃん、覚えているかい、抱き合ったあの時の恍惚を、

ストーブの熱に包まれた、薄暗い部屋の妖しさを、

母ちゃん。女の中でもいっとう好きだった母ちゃん!

 

ニクロム線の光に照らされた夕方、

バルコニーにバラ色の靄がおち、なにもかもを覆い隠したあのとき、

母ちゃんのオッパイは柔らかく、そして母ちゃんは優しかった!

ふたりで交わした言葉は、なにもかも秘密の約束事だった。

ストーブのニクロム線が、ただ赤々と燃えていた。

 

部屋に差し込む西日がきれいだった!

空が遠くに感じた! だからオイラに勇気がわいた!

女の中でも、いっとう好きだった母ちゃんに、身体をまかせていると、

オイラは母ちゃんの血の匂いが分かった。

部屋に差し込む西日がきれいだった!

 

やがて厚い壁のような夜になった。

オイラは暗闇の中に母ちゃんの瞳を捜した。

それから母ちゃんのため息を吸い込んだ。それは甘い毒だった!

母ちゃんは満足して、オイラの腕の中でぐったり眠っていた。

夜の壁は、厚みを増していった。

 

ねえ母ちゃん、あの悦びを再現する方法なんか、オイラ当然知っているさ。

だからと言って、また母ちゃんの膝枕で甘えて、

きれいな顔と優しさに、オイラのチンポを硬くさせ、

「またやろうよ」とおねだりしたら、それはいけないことだろうか!

当然覚えているさ、やり方なんか。

 

ふたりの約束、ふたりの秘密、繰り返されたキス。

また再び、あれらを蘇らせることが出来るだろうか、ふたりの深い罪の淵から。

太陽が深い海の底で浄められて、

日ごと若返って空に昇るように。

あのふたりの約束、ふたりの秘密、繰り返されたキス。