ふたりの中年男が、抜き身の匕首を腰にあてがい、睨み合っていた。
と、ふたりは同時に飛び上がった。宙に鋼の火花と血が散った。
刃と刃がかち合う音がした。この決闘は、女の取り合い。
まるでガキの乱痴気騒ぎだ。
遠く過ぎ去ったふたりの思春期のように、刃がこぼれた。
劣情に目がくらんだ男ども! 匕首が使い物にならないのなら、
歯と爪があるじゃあないか。
いい歳をした、色気狂いどもめ。
やがてふたりは、執念深く互いの首根っこを締め付けながら、
獣がうろつく谷底に落ちて行った。
きっとふたりの乾ききった肌には、茨の棘に血の花が咲くだろう。
———その谷底は地獄だった。
札付き女よ、さあ景気よく飛び込め、
男どもの決闘が、永遠に続くように!