『聖女』よ、わたしの至宝、あなた様ため、
わたしの苦悩の奥底に、地下祭壇を築かせていただきます。
その暗黒の片隅に、
俗な欲望や意地悪な視線から、あなた様を隔絶させるため、
紺碧に金銀七宝を散りばめた壁を立てさせて下さい!
あなた様はそこで、ただ奇跡の『彫像』として気取っていればいいのです。
わたしは、慇懃な『詩句』とダイヤモンドの『脚韻』を、
プラチナに整然とはめ込んだ、強大なティアラを作り、
あなた様に被せます。
そしてわたしの『嫉妬』と言う名の布地で、生きた『聖母像』のあなた様に、
外套を仕立てさせて下さい。それは、
野蛮人向きのざらついた重い布地で作ります。そして『猜疑心』と言う裏地を合わせます。
真珠などは飾りません。わたしの涙を縫い付けるのです。
きっと外套はあなた様を、ボディガードのように包み込むはずです。
あなた様のドレスはわたしの『欲望』で作らせて下さい。そのドレスは揺れ、
ドレープを打ちます。『欲望』は昂まりと静まりを繰り返し、
波頭で戸惑い、波間で呼吸を整え、
バラ色に染まったあなた様の白い肌を、恐れ多いことですが、口づけで覆い隠すのです。
わたしの『畏敬』からは、美しい靴を作ります。
繻子は、あなた様の神聖な脚に虐められながら、
柔らかな抱擁でその脚を閉じ込める忠実な鋳型になって、
あなた様の存在を記念し続けることでしょう。
わたしの力が足らず、
あなた様の『台座』に、銀の『月』を上手く彫ることが出来なかったら、
代わりにわたしの内臓に喰らいついた『蛇』を置かせて下さい。
多くの供物(くもつ)に飽きた栄えある女王のあなた様は、
償いの嘔吐物で膨れ上がったこのわたくしめを、
踏みつぶし、むち打ち、嘲弄して下さい。
わたしの『思考』が、花で埋まった祭壇の『蝋燭』のように並べられ、
青く塗られた天井に星々の輝きを瞬かせ、
燃える瞳で『聖母像』のあなた様を見上げます。
あなた様はご褒美の『黄金』と『聖水』を、わたしにふりかけるのです。
そしてわたしのすべてが『安息香』『沈香』『乳香』『没薬』となり、
白雪を頂く至上のあなた様に、
慕いながら、崇めながら、讃えながら、
蒸気となって、歪んだわたしの『情念』が上(のぼ)っていくのです。
最後に、あなた様を本物の『聖母』に仕上げるために、
愛情にどす黒い欲情が混じりあったわたしは、
怨念に操られる死刑執行人として、
7つの『大罪』で、7本の『短刀』を作らせていただきます。
そして切れ味のいいその刃を、冷酷な曲芸師となって、
あなた様の愛の急所を的にして、1本も残さず投げ込むのです!
ピクピク動く心臓に、
血まみれの心臓に、すすり哭く心臓に! あなた様を完成させるために。