『神学』が繁盛していた頃、
つまり、何事も『神様のお陰で、有難い事で……』で誤魔化しが効いていた頃。
お偉い学者様の中でも、とびきりの大先生がいた。
不信仰の者を、十字架の前にひれ伏させ、
その暗闇の不信心を、法灯の輝きで、涙させた大先生。
天使だけに許された、御大自身も見知らぬ、
天国に通じる、いとも賢き道を、登りつめた大先生。
ある日のことこの大先生、調子こいて、ついいらぬ事を口走った。
『イエスよ。このチビ助! お前、誰のお陰でそんなに偉くなったと思っているんだ。
わしがその気になったら、お前のカラクリ鎧の隙間に刃物を突き立て、その弱点を公衆に晒すなんざぁ、朝飯前だ。
そうなったらイエスよ、お前のかく赤っ恥は、今お前が浴している栄光と同じぐらいだろうなぁ。
よーく考えてみるんだな。わしの気分次第で、お前はシケたネンネも同然になるって言うことを』
大先生よ。それはちょっと言い過ぎではなかったか?
まず、太陽がびっくりして、薄いヴェールで顔を隠した。
秩序と理性と知識に満ち、
天に届けとばかりの豪奢に輝いていた教会の大伽藍は、
おもちゃ箱をひっくり返したように混乱した。おっと、大先生の様子が変だ!
鍵のない地下壕に突き落とされたようだ!
顔からは表情が無くなり、黙りこくっている。
野良犬のように街をさまよい、
目は死人のように生気なく、
今が夏なのか冬なのか、その区別もできないようだ。
襤褸を引きづってゴミ同然で、
ガキどもに枝でつつかれ石を投げられ、からかわれ者に成り果てた。