悪(ワル)の華

ボードレールは、人間を『退屈』に住む『悪』だと思っていたようです。『悪』を詠えば、人間の本質に迫れました。 『悪』はまた、衝動的で扇動的で曖昧でした。 衝動的で扇動的で曖昧なものは、おもしろおかしく好き勝手に扱えました。 『悪』は、『滑稽』にも『美』にも『神』にさえなれました。 こうして人間は、『滑稽』や『美』や『神』に変えられました。 ボードレールのやったことは、それだけのことです。では、ボードレールの言葉遊びに浸りましょう。文中、極めて不道徳で不適切な単語や表現が使用されています。予めご了承ください。

82 恐怖

救われない運命のような、

この不吉な鉛色の空から、

どんな思い付きが、お前(めえ)の空っぽな魂に降りて来るのか、

答えてみろよ、このゴロツキ。

 

———曖昧なものや、不確かなものに、

慣れ切ったオレは、

チクられたシャブ中のような、

愚痴は言わねぇよ。

 

裂けた空に、

オレの慢心が仄見える。

しおらしくしている黒雲は、

 

オレの夢を運ぶ霊柩車。

そして雲の切れ目の薄明りは、

地獄の反射だ。