悪(ワル)の華

ボードレールは、人間を『退屈』に住む『悪』だと思っていたようです。『悪』を詠えば、人間の本質に迫れました。 『悪』はまた、衝動的で扇動的で曖昧でした。 衝動的で扇動的で曖昧なものは、おもしろおかしく好き勝手に扱えました。 『悪』は、『滑稽』にも『美』にも『神』にさえなれました。 こうして人間は、『滑稽』や『美』や『神』に変えられました。 ボードレールのやったことは、それだけのことです。では、ボードレールの言葉遊びに浸りましょう。文中、極めて不道徳で不適切な単語や表現が使用されています。予めご了承ください。

87 お日様

非情なお日様が、強烈な光線の矢を、

パリにも田舎にも射込む午後に、あるいは、

裏さびれた場末の連れ込み宿のカーテンが、

不倫の触れ場を隠す時に、

オレは創造の腕試しをしようと、外を出歩いてみた。

ちょっと気の利いた街角で、語呂合わせを思いついた。

ときには、敷石につまずくように言葉に行き詰まったりもした。

しかし、ハッとする詩句もひらめいた。

 

オレの創造力は手強いヤツだ。

言葉を、干上がった地面に咲く薔薇にした。

憂鬱を、霧に変え空に吹き飛ばした。

馬鹿の頭を、蜂の巣のように蜜で満たした。

 

老いぼれ婆さんを、

花も恥じらう生娘にし、

お望みとあらば、

妊娠もさせた。

 

こりゃあ、本物の詩人かもしれないと、

遠慮会釈なしで、大詩人ッ家(チ)の敷居をずげずげ跨いだ。

売れないライターのくせして、空想が先走って、

オレはふんぞり返って、偉そうな口をたたいた。