悪(ワル)の華

ボードレールは、人間を『退屈』に住む『悪』だと思っていたようです。『悪』を詠えば、人間の本質に迫れました。 『悪』はまた、衝動的で扇動的で曖昧でした。 衝動的で扇動的で曖昧なものは、おもしろおかしく好き勝手に扱えました。 『悪』は、『滑稽』にも『美』にも『神』にさえなれました。 こうして人間は、『滑稽』や『美』や『神』に変えられました。 ボードレールのやったことは、それだけのことです。では、ボードレールの言葉遊びに浸りましょう。文中、極めて不道徳で不適切な単語や表現が使用されています。予めご了承ください。

117  頭蓋骨と愛の女神       余白への落書き

愛の女神が人間の頭蓋骨の上で、

あぐらをかいて、

ケラケラお行儀悪く笑いながら、

シャボン玉遊びをしている。

 

シャボン玉は、

空に昇り

遠い宇宙の果ての

星になろうとしている。

 

だがキラキラ光る球体は壊れやすく、

    大気圏に届く前に、

パチンと弾けて消えてしまう。

    中味は、宝石の見る夢のように吐き出される。

 

その中味が弾けだされるたびに、

    頭蓋骨は泣きながら訴える。

———「この残酷な遊びは、

    いつになったら終わるのだ?

 

愛の神と言う名の、人殺し。怪物。

    あんたの口が大気にまき散らしているのは、

オレの脳ミソと、オレの血と、

    オレの身体なんだぜ。