119 ※1アベルとカイン
Ⅰ
アベルの子孫よ、満足するまで、眠り、飲み、食べよ。
神はお前らに好意を持っている。
カインの子孫よ、泥の中で、
這いずり回って、惨めに死んでいけ。
アベルの子孫よ、お前たちの捧げる供物は、
天使の鼻をクンクン鳴らす。
カインの子孫よ、お前たちの苦しみには、
終わりは来るのか?
アベルの子孫よ、お前たちが蒔く種も、
家畜もよく殖えている。
カインの子孫よ、お前たちのハラワタは、
老いた犬のように飢えている。
アベルの子孫よ、お前たちの腹を、
族長の暖炉で暖めろ!
カインの子孫よ、その洞窟の中で、
寒さに震えていろ! すきっ腹のジャッカルのようにな。
アベルの子孫よ、愛せよ、殖えよ!
お前たちの黄金も、同じように子を産むのだ。
カインの子孫よ、その燃える心よ、
過ぎた欲は許されない。厚かましぞ!
アベルの子孫よ、青虫のように、
若葉を齧って肥えろ!
カインの子孫よ、追い詰められた家族を従えて、
路頭に迷え!
Ⅱ
ああ、アベルの子孫よ、お前たちの屍は、
湯気の立ちのぼる大地を肥やすだろう!
カインの子孫よ、お前たちの仕事は、
まだ終わってはいないぞ!
アベルの子孫よ、イノシシを突く槍が、
鋤にまけたのだぞ。恥だと知れ!
カインの子孫よ、天に昇って、
神を地上に突き落とせ!
※1旧約聖書創世記第四章にある『カインとアベル』の兄弟の逸話による題名。
農業に従事する兄カインと狩に従事する弟のアベルは、アダムとイヴの子。ある日、神はこの兄弟に捧げ
ものを要求した。神はアベルが捧げた仔羊をいたく気に入り、カインの捧げた作物には見向きもしなかっ
た。これをカインは妬み、アベルを殺した。