むかし、僧院の壁に、
神様の『粋』を絵にして、並べたそうだ。
そのお陰で、信仰心は温まり、
小難しい寺の冷たさも、なんとはなしに和らいでいたと聞く。
キリストの教えが、花と栄えた頃、
今では名前すら知られていねぇ、偉い坊さんが、
墓場を仕事場にして、
純情な絵筆でもって、『死』に意味の色付けしていたらしい。
———オレの魂も墓場だ。とっくのとうから、そうだ。
そこには、出来損ないの坊さんが住み着いていている。
ただし、なまくら坊主だから、気の利いた絵のひとつも画いたりしねぇ。
このクソ坊主め! いつになったら、
オレと言うモノを、この悲惨を、この矛盾を、この複雑を、
オレ自身の手で画かせてくれるんだ。そうしてオレ自身の目を満足させてくれるんだ。