悪(ワル)の華

ボードレールは、人間を『退屈』に住む『悪』だと思っていたようです。『悪』を詠えば、人間の本質に迫れました。 『悪』はまた、衝動的で扇動的で曖昧でした。 衝動的で扇動的で曖昧なものは、おもしろおかしく好き勝手に扱えました。 『悪』は、『滑稽』にも『美』にも『神』にさえなれました。 こうして人間は、『滑稽』や『美』や『神』に変えられました。 ボードレールのやったことは、それだけのことです。では、ボードレールの言葉遊びに浸りましょう。文中、極めて不道徳で不適切な単語や表現が使用されています。予めご了承ください。

10 敵

オレの若(わけ)え頃は、ひでえ嵐に似ている。

そりゃあ時には、一筋の光が射したこともあったさ。

しかし、ほとんどスゲエ雷雨の日々だった。

実りの季節でさえ、

 

鋤と鍬で、洪水の去った、

墓場のような地面を、

耕し直すといった有様だった。

そのせいか、結局ひとつの果実も実らなかった。

 

オレが夢見た新種の花が、  

この不毛の砂地に、

咲くことがあるだろうか?

 

悔やんでも悔やみきれねぇ! 時間がオレの命を食いつぶしている。

オレの心臓を削る敵が、どこかに隠れている気配がする。

そして、オレの血を嘗めて、肥え太る機会を狙っている。