悪(ワル)の華

ボードレールは、人間を『退屈』に住む『悪』だと思っていたようです。『悪』を詠えば、人間の本質に迫れました。 『悪』はまた、衝動的で扇動的で曖昧でした。 衝動的で扇動的で曖昧なものは、おもしろおかしく好き勝手に扱えました。 『悪』は、『滑稽』にも『美』にも『神』にさえなれました。 こうして人間は、『滑稽』や『美』や『神』に変えられました。 ボードレールのやったことは、それだけのことです。では、ボードレールの言葉遊びに浸りましょう。文中、極めて不道徳で不適切な単語や表現が使用されています。予めご了承ください。

12 前世

オレ様は前世、海辺の景勝地で、豪壮な建物の柱廊の中に暮らしてたんだ。

見上げる柱は、太陽の光を反射して、キラキラ輝いて、

日が落ちたら、

内部は洞窟のように、真っ暗でひんやりしていた。

 

うねる波は、空の揺り籠のようで、

怒声とも、囁きともとれる、

複雑な音を混ぜこぜにして、

夕日を浴びれば、オレ様の前で色気ついて、ケバい化粧をした。

 

青い海、たゆたう波、そして強烈な光。

オレ様は、香油を擦りこんだ召使にかしずかれて、

自由気ままに暮らしていた。

 

ただな、オレ様を、椰子の葉であおぐ召使の熱心さは、買ってやりてぇとこだが、

少々、有難迷惑ってとこで、気難しいオレ様を、

よけいに落ち込ませるだけだった。オレ様は、前世でも面倒くせぇ人間だったのさ。