きのう、占いを生業にしている目つきの悪いジプシーが、
ガキを背負って、旅立った。
母ちゃんは、腹を空かしたガキに、
垂れ下がったオッパイをあてがって、荷馬車に揺れていた。
危なっかしい武器を背負った父ちゃんは、
家族の馬車の脇を守り、
虚ろな目で、空を見上げていたっけ。
夢なんかちっとも叶わねぇ~、って不景気なツラしてよぉ。
コオロギが、砂のねぐらから飛び出て、
通り過ぎるジプシーを、ピーピーと鳴いて見送っていた。
大地母神シベールは、ジプシーを景気つけてやろうと、
緑を茂らせ、岩に水を湧かせ、砂漠に花を咲かせた。
しかしジプシーの行方は、闇で飾られていた。
旅先に、なじみのどん底が待っているのを、ご本人たちは、よーくご存じのようだ。