悪(ワル)の華

ボードレールは、人間を『退屈』に住む『悪』だと思っていたようです。『悪』を詠えば、人間の本質に迫れました。 『悪』はまた、衝動的で扇動的で曖昧でした。 衝動的で扇動的で曖昧なものは、おもしろおかしく好き勝手に扱えました。 『悪』は、『滑稽』にも『美』にも『神』にさえなれました。 こうして人間は、『滑稽』や『美』や『神』に変えられました。 ボードレールのやったことは、それだけのことです。では、ボードレールの言葉遊びに浸りましょう。文中、極めて不道徳で不適切な単語や表現が使用されています。予めご了承ください。

13 旅するジプシー

きのう、占いを生業にしている目つきの悪いジプシーが、

ガキを背負って、旅立った。

母ちゃんは、腹を空かしたガキに、

垂れ下がったオッパイをあてがって、荷馬車に揺れていた。

 

危なっかしい武器を背負った父ちゃんは、

家族の馬車の脇を守り、

虚ろな目で、空を見上げていたっけ。

夢なんかちっとも叶わねぇ~、って不景気なツラしてよぉ。

 

コオロギが、砂のねぐらから飛び出て、

通り過ぎるジプシーを、ピーピーと鳴いて見送っていた。

地母神シベールは、ジプシーを景気つけてやろうと、

 

緑を茂らせ、岩に水を湧かせ、砂漠に花を咲かせた。

しかしジプシーの行方は、闇で飾られていた。

旅先に、なじみのどん底が待っているのを、ご本人たちは、よーくご存じのようだ。