完璧なボディーラインの、きれいな女だった。
髪の毛がワイングラスに浸っていても、気にしない女だった。
セックスで突き立てる爪も、梅毒も、
その硬い花崗岩のような肌を滑るだけだった。
彼女は『死』に微笑み、『快楽』を足蹴りした。
『死』と『快楽』は、手当たり次第に引っ掻き、
気晴らしに鎌で首を刎ねたりする怪物だ。
しかし、ド迫力この女にはビビったのか、指一本触れようとしない。
彼女は女神のように歩き、王妃のように横たわる。
アレをやっているさなかにも、神に祈る芝居をして、
胸元をひろげ、乳房をさらして、
全人類を抱き寄せようと色目を使う。
彼女は、肉体の美こそ神が与えたもっとも崇高な贈り物で、
これさえあれば、すべてが許されることを知っていた。
たとえ子は産めなくとも、肉体の美があれば、
恥ずべきことではないとも考えていた。
彼女は『地獄』も『煉獄』も知らない。
真っ暗な『死』に足を踏み出す時が来ても、
好奇心いっぱいに『死』を見つめ、恐怖も後悔もなしで、
あたかも生まれたての嬰児のように、無邪気に笑うのではないかと思う。