悪(ワル)の華

ボードレールは、人間を『退屈』に住む『悪』だと思っていたようです。『悪』を詠えば、人間の本質に迫れました。 『悪』はまた、衝動的で扇動的で曖昧でした。 衝動的で扇動的で曖昧なものは、おもしろおかしく好き勝手に扱えました。 『悪』は、『滑稽』にも『美』にも『神』にさえなれました。 こうして人間は、『滑稽』や『美』や『神』に変えられました。 ボードレールのやったことは、それだけのことです。では、ボードレールの言葉遊びに浸りましょう。文中、極めて不道徳で不適切な単語や表現が使用されています。予めご了承ください。

吸血鬼の変身(禁断詩編より)

イチゴのような半開きの唇を、指でなぞりながら、

火に投げ込まれたヘビさながらに身をよじり、

乳房をブラジャーのワイヤーで揉み上げ、

苦くて甘い息を吐き、女はこんな言葉を洩らした。

———「ワタシ、知っているわ、アンタの良心をブッ飛ばす方法を。

それにしても、何て、ぬめった唇なのかしら……。

ワタシの乳房は、どんな涙も乾かしてきたし、

おじいちゃんを、赤ちゃんに変えてきたわ。

真っ裸になって、男の前に立つときには、

月にも、太陽にも、女王にも、ライオンにでもなれるわ。

ワタシのオマンコは、そんじょそこらのものとは違うのよ。

咥え込んだチンポが悲鳴をあげるって評判よ。

特にこの首を絞めてごらんよ。

締まりがよけい良くなって、

布団までボゥーとして、

半死人だって射精するわよ。」

 

オレはキンタマ汁を全部吸い取られ、

ぐったりとなったまま、口づけのお返しをしようと、

女の唇に舌を差し出したとき、そこにオレは見てしまった、

ぬらぬらと膨れ上がった、膿だらけの革袋を!

オレはゾッとして思わず両目をつぶった。そして夜明けを待つことにした。

やがて、清々しい朝日が部屋を満たした。そっと目を開いて、

傍らの女を見た。そこにはあの血色の赤味を帯びた人間はおらず、

骸骨が散らばり、その骨の一つ一つが震え、

冬の夜通し風に揺られる、壊れた風見鶏や、

鉄の棒にぶら下がった看板の、

あの軋む音に似た泣き声を、

からからと上げていた。